前提
さて、2015年を迎えても今のところ、
『第3次スーパーロボット大戦OG』の話は全く聞こえてこない。
いずれ来るであろう続報に備え、ここでちょっと触れておきたい事がある。
それは『ダークプリズン』における、
ガンエデンの「月への一見すると無意味に思える砲撃」の件だ。
未参戦のバンプレストオリジナルで月に関連する作品といえば、
『スーパーロボット大戦J』のフューリーだ。
次作があるとすれば、彼らが登場する可能性は高い。
……が、困ったことに『J』のシナリオは
相当に急ピッチで進められたと見え、
かなりの粗が存在している。
『OG』に参戦するに辺り、どこを
クリアしていなければならないのか、
ちょっとピックアップしてみたいと思う。
問題の重要度にあわせ、高、中、低の3つに分類してみた。
何故カティア達はさらわれたのか?
重要度:高
『J』では主人公機にサブパイロットが必ず必要だ。
純粋なフューリーと違い、フューリーとの混血である統夜や、
サイトロンに対して適正があるというだけのカルヴィナは、
単独で機体を操縦できない。
十分に機体を動かすにはカティア達三人いずれかの
同乗が必要という設定だ。
三人娘は幼いころにフューリーに拉致され、
彼らの実験施設で実験体として育てられた。
その過程でなんらかの処置を受けた結果、
フューリーメカのサポート操縦が可能となっている。
が……
なぜ敵である地球人をわざわざ誘拐し、肉体を改造し、
機動兵器を操縦できるようにしたのか?
フューリーの人間であれば、機動兵器の操縦は一人でこなせる。
サブパイロットの補佐など必要ないのだから、
彼らのためでないのは明らかだ。
まさか……
同じ見た目だからとりあえず改造してみよう
なんていい加減な理由じゃないだろうな……?
既存の例で例えるなら…
ラトゥーニやアラド達ブーステッド・チルドレンが
なぜ集められたのか説明されないで話が進むようなものだ。
三人娘がいなければ、主人公も機体の操縦が出来なかった。
そもそも、主人公機が主人公の手に渡る可能性も低かっただろう。
結果的にはフューリーの目論みが全部水泡に帰してしまったのだから、
とんでもない大失態である。
そしてこの疑問に答えるような説明は『J』のどこにもない。
(もし知っている人がおられましたら、何話のどのあたりで語られているか教えて下さると助かります)
どこから来てどこへ行く
重要度:低
上記の問題に続いて。
三人娘はフューリーの施設から主人公機に乗って脱走して来た。
そして主人公の下にたどり着くという筋立てだ。
でも……
どこから脱走して来たのかなぜ説明しないのか?
初登場時はこう語っている。
甲児
「へぇ、なるほどねぇ。
よくわからない連中に捕まってたのを、
その人が助けてくれたってわけか」
カティア
「ええ。でも追いかけられて。
彼は〔主人公機名〕と私たちだけを逃がして、
自分は追っ手を食い止めるために残ったの。
きっと、もう…。私たちは彼と約束したのよ。
〔主人公機名〕を守るって」
さやか
「その人って、あなたたちが捕まっていた
連中の仲間なんでしょう?
なぜそんなことをしたのかしら…。
それに、そのロボットだって…」
カティア
「わからないわ。
でも、あれは絶対に破壊されてはいけない。
絶対に奪われてはいけないと」
フェステニア
「アタシたちさ、昔そいつらの所に連れていかれて、
それきりずっと変な施設に閉じ込められてたの。
だから、アタシたちを逃がしてくれた
あの人の言ったことだから、アタシたちは
あの機体を守らなきゃならない。どうしても」
第1話(統夜ルート)「降ってきた「災厄」?」より引用
どこから逃げてきたのかの説明だけが
すっぽり抜け落ちている。
フューリーは地球上に特に拠点を設けていなかった。
おそらく拠点となる場所はガウ・ラ=フューリアただ一つのはずだ。
この地球に一つしかない衛星から逃げて来て、
それが説明できないと言うのはおかしいぞ。
しかも、「必死で逃げてきたので道を覚えていない」
「ナビゲーションも作動し忘れていた」といったような、
もっともらしい理由づけすらしていないのだ。
三人娘が囚われていた時の話は、
マサトによって「フューリーが月にいる」という情報が
明かされた所でもう少しだけ触れられる。
カティア
「ごめんなさい。私たちにはわかりません。
ただ、空や星を見た覚えはないわ。
私たちがいた“施設”の外に出たこともない」
フェステニア
「うん。それにアタシたちが知ってるのは、
そこのほんの一部だけだもん。
どれだけ大きい建物で、その外がどうなってたかなんて、
全然知らないんだよ」
メルア
「そうですね。私も見たことないです」
カティア
「だから…
月の中にあるなにかの構造物だった、と言われれば、
そうかもしれないとしか言いようがないわ」
第33話「対決! デビルガンダム軍団!」より引用
これはあくまで施設の中の様子で、逃げて来た時の状況ではない。
更に重箱の隅だが、このシーンでは誰も
「月の低重力」について言及していない。
つまり、そこが低重力環境であるか否か、三人娘に質問すれば、
少なくとも地球上でないことは判明するのだ。
(むろん、そこが月かどうかは確実ではないし、
ガウ=ラ・フューリアには人工重力発生装置があるかも知れないが)
ただ、敵の本拠地がどこにあるかを推測できる場面なのに
誰も突っ込んだ質問をしていない。不自然だろう。
ともかく、
- 月から逃げてきたのか?
- それともどこかへ移動する途中、隙をついて逃げてきたのか?
- オルゴン・クラウドの機能でどこか遠方へ転移させられたのか?
せめてそれぐらいは説明すべきではないか。
急募! 未経験者でも可!
重要度:中
はっきり言って、フューリーは設定面だけで言えば
バンプレストオリジナル随一の種族だ。
- 時を止めるテクノロジーを保有している
- 星団、つまり複数の銀河にまたがって繁栄できるだけの人口
- そのような銀河間を往還できるだけのテクノロジーがある
(そうでなければ広大な国家が成立しえない)
ハードSF水準の種族であり、その技術力は相当な物だ。
……しかし。
これだけの技術力があって、
なぜ兵器開発に地球人の手を借りたのか?
またお得意の、地球人は兵器の開発にかけては
異常に発達している説の出番なのだろうか。
これだけ圧倒的に進んだ文明を持っていながら
自前で兵器開発できないという方が、よっぽど
いびつな発達を遂げていると思うのだが……
繰り返すが、時を止められるような技術にまで
行き着いた種族が、仮にそんなことを言ったとしても、
何の説得力もない。
経験者は優遇します?
重要度:中
『J』の共通エンディングでは
「難民に指定されていたフューリー124万人」という数字が出てくる。
相当な数だ。
それだけの人間がいて、なぜ地球人
(カルヴィナ)の手を借りる必要があったのか?
アシュアリー・クロイツェル社の秘密実験施設には
アル=ヴァンだっていたのだ。
さらに本拠地にはフー=ルーもいる。
単にパイロットを育成したいのなら、
二人の騎士が指導役を務めれば済む話である。
地球人をフューリーの機体に乗せたせいで、
カルヴィナのようなサイトロンに対する適正もつパイロットが
生じてしまっている。またも大失態だ。
カルヴィナを殺し損ねたのは
アル=ヴァンのミスだったが、それはまた別の話……。
東京ドーム××個分
重要度:中
彼らの母船であるガウ・ラ=フューリアは
124万人のフューリーを収容している。
ラスト直前+ラストステージと、
2回も機動兵器が内部で戦闘できるだけの
スペースがあるのだから、相当に巨大な船だ。
が……
それだけ広いならガウ・ラ=フューリアの内部で
秘密裏に兵器を開発すればよかったのでは?
アシュアリー・クロイツェルの施設を借りる必要がわからない。
地球の施設を利用したために、フランツ・ツェッペリンのような、
フューリーのテクノロジーに通じた地球人が登場する
という失敗を犯している。
しかも、のちの話でさらなる追い打ち。
最終決戦で追い詰められたグ=ランドンは
ガウ・ラ=フューリアの全サイトロンエナジーを使って
機体を無限に再生させる。
そのメカニズムというのが
マサト
「サイトロン粒子を原子に変換して、
物質に再構成する…
そんな技術を実現していたなんて…」
第52話「冷たい世界 後編」より引用
そんな技術があるなら
それで機体を製造すればよかったのでは?
全エネルギーを使わなくても、
計画的に製造するのであれば十分元手は採れるだろう。
木原マサキのような天才に察知されるのを恐れたのだろうか?
それならば、地球圏から十分に距離を取った場所で行えばよい。
なにしろフューリーは銀河間規模で国家を築いていた種族なのだ。
恒星間の距離ごときを移動できないとは思えない。
この三つの問題を総合すると、
技術的にも、場所的にも、人材的にも、
地球人の手を借りた理由が謎なのだ。
消えたお母さん
重要度:低
シャナ=ミア・エテルナ・フューラは皇女であり、
フューリーの中でも指導者としての立場にある。
マサト
「僕が木原マサキとしてフューリーに接触した時、
たしかあなたにはお会いしませんでしたね」
シャナ=ミア
「はい。そのころ私は、揺籃器の中にいたと思います。
私はこの地、この時代に生を受けた
フューリーの、最初の世代なのです」
第51話「冷たい世界」(前編)より引用
このことから彼女は
40億年前に赤ん坊の状態で時間停止状態に入ったのではなく、
17年前より後になってから、生物学的に母親から誕生したことがわかる。
だが、作中には彼女を生んだであろう母親(おそらくは皇妃)が登場しないのだ。
シャナ=ミアを生んだ他の皇族はどこに?
父親はおそらく先帝、先のフューリーの皇帝だろう。
先帝が身ごもっていた妻を含め、124万人のフューリーを
グ=ランドンに任せて戦場から脱出させたと仮定すれば筋は通る。
皇妃がいるとすれば、
明らかにシャナ=ミア、グ=ランドンよりも上の地位にあるはずで、
ストーリーに一切関わってこないのは不自然だ。
あるいは、フューリーの社会では
人工的な揺籃器の中から出てきたことを
「生まれた」と表現するのかも知れないが……
それならそうと説明しないと意味がわからないぞ。
ただし、「不慮の事故で亡くなった」とでも
理由を付け加えれば済む話なので、
シナリオ全体への影響はほとんどない。
寝ぼすけフューリー
重要度:高
フューリーが公然と姿を現したのは『J』の第17話。
しかし、彼らは物語の始まる以前から行動を始めていたようだ。
マサト
「17年程前です。当時❝次元連結システム❞を
開発中だったマサキはあるときささいな偶然から、
月面にときおり現れる“特異点”に気づきました」
「それがなんなのか、彼らがどこから来て、
いつからそこにいるのかはわかりません。
でも彼らはそこにいる。あの、月の中に。
そして、この『自分たちの星』に存在する
イレギュラーな生命体…人類を抹殺しようとしています。
マサキはそれを知って、彼らもまた自分が
倒すべき敵であると認識したんです」
第33話「対決! デビルガンダム軍団!」より引用
『J』の世界では、フューリーは少なくとも17年前には
活動を始めている。木原マサキがゼオライマーを造ったのは、
フューリーに対抗するためでもあったようだ。
そして、別の場面。
フー=ルー
「この激しい感情…怒り?
あのマサキという地球人もそうだったわ。
それを知ったから、私達は計画に保険をかけたってわけ」
第37話「舞い降りる剣」マサトvsフー=ルー戦闘前会話より引用
当時の時点で地球人の危険性を認識していたこともわかる。
すると浮かんでくる疑問。
17年前の時点で地球圏の状態を知っていたなら、
なぜその時に行動を起こさなかった?
これは第33話の同じ場面でも
甲児
「確かに奴らの兵器は強力だぜ。
〔主人公機名〕がなきゃ対抗できない
例のシステムだってある。
けどだったらなんで今さらなんだ。
少なくともそん時にはもういたんだろ」
と即座に指摘されている。
作中でも語る予定だったのだろう。
が、その答えは結局語られないまま終わっている。
兵力を整える時間がいるというのだろうか。
……それにしても17年は長すぎる気がするが。
この17年間で彼らがしたことと言えば、
- 三人娘を誘拐し、フューリーの機体を
サポートできるよう処置を施した。 - 地球人の手を借りて機体を開発し、技術を漏洩させた。
- サイトロン適性のある地球人のパイロット
(カルヴィナ)を生み出した。
……最初から計画を失敗させる気だったとしか思えない。
ここまでの問題をクリアするために、ひとつの案を打ち立ててみた。
つまり……
- 当初のフューリーは平和的な移住案を推進しており、
そのための準備として調査員を地球圏に潜入させていた。 - しかしグ=ランドンは、秘密裏に
人類絶滅を前提とした過激な計画を進めていた。 - 何らかの事故でシャナ=ミア以外の皇族が死亡した。
- グ=ランドンが移住計画の実権を握り、
大々的に強硬策が進められるようになった。
……しかし、この案でも三人娘を拉致した理由や、
わざわざ地球人の手を借りた理由が説明できない。
ダメだこりゃ。
長くなったのでここでいったん切り。続きは後日。